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その心を暴露するとロイド/FEH 19.08.19(許された距離 続き)
※中身がない!
ずるい。は心底思って目を閉じた。
まだ夜明け前で、辺りは暗い。けれども鳥の囀りが聞こえるから、とは起き出す。ここは自分の部屋ではないから、何事もなかったように部屋へ戻りたかったというのに、彼は起きてしまった。そして朝の挨拶を終えて、始まってしまった。
「……まだ朝なんですけど」
「逃げるつもりだろ?」
さもありなん、とロイドは言って笑む。風貌が好みであることは告げていて、人によっては思うところのある言葉だろうに彼はそこをあざとく使う。本人曰く【意地は悪い】とのことだった。
だいたい起き抜けからの行為など心臓に悪い。経験がないとか眠いとかそういうことではなく、とにかくむず痒くて仕方がない。キスの合間に「そういえば」とこの部屋のもう一人の主を思い出して探すも、顔を固定されての狭い範囲を行き来する視線だけでは見つけられない。けれども答えはすぐに得られた。
「ライナスなら朝の鍛練に行ったぞ。体力を持て余してるからな」
「わー、教えてくれてありがとー」
まだ暗いのに。と思えないのはそんな余裕をロイドに奪われているからで、言葉すらも奪われる。「んん、」と漏れた声が彼を煽るのが分かった。断りもなく当たり前に舌が口内へ割り入ると、慣れなのかも絡ませてしまうから、彼女の戸惑いの程度は知れている。
何度も角度を変えて繰り返される口づけに思うことは一つだ。しつこい。時間や場所の制限があるにはあったが、それなりの濃い時間は作っていたはずだ。だからは今のロイドの状態をそういう“波”によるものという認識をしていて、そこに間違いはない、はずだ。
「ちょ、ロイ、ど…っんん、ま、待った、ま……って!」
「ん?」
「なんかすごくハズかしいので、抑えめに――」
「……」
「え、なにそのキョトンとした顔」
「いや」
胸が熱い。と感じてそれがむず痒い。情とするなら少し過ぎている。だから口にしたのに、再びそれを押し込めるように、ロイドは口付ける。そして行為を再び進め始める。先程と何ら変わらない熱量だ。「聞いてない……」とぼやくの声を彼は確かに聞いたが、聞くつもりはなかった。
手が腹部に触れ、それはそのまま服にかけられる。ゆっくりと腹の上を、胸の上を、首の上を通り過ぎ、鼻の上を過ぎた辺りで動きが止まる。視界は衣服の中に置き去りで、続きを取り去ろうとしての体は大きく震えた。
「っ!」
なに、とは愚問で、半端に脱げている衣服を取り払えば、ちゅうと胸の先端に吸い付いているロイドと目が合う。と瞬時に首から上が熱を帯び、下半身が疼いた。
唇が刺激を受けて尖る先端をぐり、と甘く食む。乳房に指先が浮き沈みを繰り返し、食まれるのとは違う刺激を与えられると、の手はロイドの服にかかり自分ばかりが肌を出しているのはずるいと言わんばかりに少々乱暴に脱がせた。得られる刺激を払い除けては体を起こす。体重を使ってロイドを押し倒すと、そのまま彼のズボンの前を寛がせ、既に硬くなっている陰茎を取りだし、躊躇いもなく口に含んだ。
「……っ!」
「ん、んん……ん」
唾液を絡ませ、首を上下に動かせば口の中で質量を増していくそれに息が苦しくなる。亀頭周りに舌を這わせる度にぴくんと動くものだから、それが良いのだろうと攻めていると、ロイドが上体を起こす。と、手を伸ばしての片足を捕まえ、ぐいと引っ張り彼女の臀部を自身へ向けさせた。下衣を引き下げると、興奮が先走った部位が顕れる。中指の先で割れ目を撫でると既に露に濡れている。つぷんと第一関節まで埋める。行為の本質を表す刺激に膣が締まるのを見止めて、ずぶ、と根本まで挿せば「んふ……っぅ」とは鼻から息を抜いた。
ここで彼女がロイドの逸物を口から放し、悶えるようであれば彼はすぐに次へ行動を移すつもりであった。けれども、は耐え、口淫を続けるのだ。ロイドの好奇心を煽るには十分過ぎた。
陰部に埋まった指にピタリと張り付く肉壁は熱い。緩い律動に悦びながら体液を浸出させ、絡ませる。明るくなっていく部屋に相反する情事の音は不似合いで、淫らで、興奮を誘った。
口淫を受ける一方で、ロイドは彼女の中を撫でる。手首を右へ左へと回しながら、抽挿とともに肉壁を撫でた。ぷくりと膨らみ充血する花芽を強くグリグリと押せばの腰が浮くのだが、股を掴んで攻め続ける。彼女がどこまで続けるのか、と意地悪く思って秘部から指を引き抜き、彼は“つい”舌を挿し入れた。
「やっ!……ちょ…っひゃ、ぅ!」
そういえばはあまり慣れていなかったか。と思い出しながらロイドは答えることをしなかった。聞こえなかったのかもしれない。舌先で引っかけるように浅い部分を舐めると、慣れない刺激には悲鳴をあげて逃げ出そうとする。それを封じるのは容易く、抵抗に構わず吸い付けば苦し紛れなのか、彼女の頑固さなのか、は目前の硬く屹立する陰茎を掴み、再び口に含んだ。ロイドがそうするように彼女もまた吸い付き、舌を絡める。頬張るということを滅多にしないは苦しくて堪らない。
「。無理するな」
「ん、ふ……ぅ、んン」
ロイドはよかれと思ってそう告げるのだが、吐息が秘部を撫でるまだるっこしさだけがに伝わり、彼女はやめようとしない。陰嚢を手に、不器用な手付きで揉み始めさえする始末だ。ひくつく秘部と揺らめく腰が既に音を上げているというのに、頑固一辺の彼女に、ロイドは折れてやることにした。
つ、と割れ目を撫で、「そろそろ挿れたいんだ」と言えば、ちゅうと名残りの音を上げては顔をあげる。彼女の下から抜け出で、腕を掴んで抱き寄せた。
「どっちだ?」
「まえ」
耳元で訊けば目を閉じたままで答える。先程まで自分がそうしていたように彼女の体を横たえさせ、ロイドは両足を開かせる。膝裏に手をかけ力をいれると、尻が浮き、愛液に溢れた秘部が上を向く。自身の雄の先端を当てれば、の表情が艶かしく歪む。ロイド自身もまた心待ちにしていた快楽を手に出来ると腰を進めた。
の唾液が絡んだロイドの雄は僅かな力で侵入を果たす。それでも亀頭部が入口を引っ掻く程のきつさはあって、それが堪らない快感だ。
「は、ぁ……ン」
浅い律動に焦れ始めたのを見計らい、望むままに深く埋める。唐突に訪れた大きな刺激がの喉を反らせる。ぐぐぐ、と子宮口へ押し付けながら、反った喉に吸い付く。彼女の中で馴染むのを待って、緩やかに律動を始めた。
ずるりずるりと、蕩けきっている筈なのに感覚が過敏だ。緩みきっているということもなく、むしろすぐに達してしまいそうな善さがある。
「あ、あア、ん!ぁ……!」
自らの両膝を抱いて深い挿入を望む姿は扇情的で、その手を握り抉るように腰を打つと一際高い声では喘ぐ。感度が高くなっているのか、締め付けが強く、内部の熱さも彼女の貪欲さも全てが伝わって悪くない気分だ。
「」
少し声が気になる。早く起きる者はいて、弟同様に体を動かすのが好きな者は特にそうだ。そもそも皆が行動を始める時間帯に差し掛かる今、こうした情事に耽るリスクは高い。承知の上でありながら、思い切ることが出来ず、体を屈め彼女の体の下に腕を差し込むようにして密着すれば、柔らかな胸が自身の固い胸に当たる。心音が伝わる程にきつく体を押し付け、口を塞ぎ、彼女の声を呑んだ。
「ふぁ……っ!……ん、む」
苦しい、と拒むのを捉える。
「は、っ……ロイドさっ、ん……ィ!も、と!」
繰り返す口付けの合間にそう本音を漏らすに、呆気ないほどに己をくれてやれる。ギッギッ、と喘ぎ声の代わりにベッドの軋む音が大きくなる。それと共に足が腰に絡み付き、彼女は彼女でより欲望的に快感を得ようとする――どうしようもなく昂る射精感をロイドは耐えようと、体を離した。ずるりと半端な位置に留まる雄にはただ悶えるしかない。彼自身のための行為など彼女にとってはただの焦らしでしかなかった。
じと、と恨みがましい視線をやり、「おねがい」と手を伸ばし筋の立つ腕に触れる。一つ二つ三つ、と呼吸を重ねるロイドはもたげた射精感が少し息を潜めたことに小さく息をつく。小さな体をくるりと横向きにすることくらい雑作もない。下になったの足を挟んで、反対側を脇に抱え込む。
「ア、……っふか、い!…あン!ぁあ!」
最奥の部屋の入口をロイドの雄が叩くと、の肉壁はきつく収縮する。それはその場に留まることを強いているようだ。
強い快感に喉が鳴る。
「ろいど……さ……っん!」
達してしまいそうな感覚が容赦なく迫る。すがるものは――彼しかいない。腰に添えられていた大きな手に触れれば当たり前のように反ってくる。安堵の波が広がれば、次にあるのは相反する本能で元々の目的だ。
視界がぶれるほど揺すられ、結合部からはしとどに絡み合ったどちらのものともしれない愛液が溢れて、シーツに染みを作る。逃げ出したくなるような大きな波と、呑まれたくて仕方ない欲と、混ざり合って意識が白濁していく。漏れ出る喘ぎ声の大きさに、は意識をやる余裕はない。
「やッ、や……っはあ、イクっ……あ、ああっ、ぁ!」
揺られながらぷつりと力が抜ける。弛緩した体はロイドの思うがままだが、彼もまた同じようなタイミングで白い欲をきつく収縮する膣内へ放出する。吐き出される度にびくびくと奮えるロイドの雄は、すでに達したにまた別の充足感を与えていた。
余韻にひたり、気だるげな表情のの額に張りつく髪を払う。乱れた呼吸を整えるにはまだ僅かな時間が必要で、彼女の口が開くことはない。
僅かに固さを失った雄を引き抜き、ロイドはを自身の上になるように抱えてごろりと横になる。気だるいのは彼も同じだ。
トクトクトク、早い鼓動の人間らしさが愛しくて仕方がなかった。